google.com, pub-8557824064745223, DIRECT, f08c47fec0942fa0 リハビリテーションと栄養を考える | STちゅうげんのブログ

リハビリテーションと栄養を考える

フレイルやサルコペニア、PT/OTの養成に栄養学が必修となったなど

リハビリテーション(以下、リハビリ)と栄養について、近年注目されていますね。

今回はリハビリと栄養について文献から考えたいと思います。

まずは、エネルギーとタンパク質について勉強しましょう。

今回の参考・引用文献

リハビリテーションと栄養 山縣誉志江、栢下淳

ディサースリア臨床研究 Vol.10 No.1 pp61-65 2020

なぜ、栄養管理が必要なのか?

現在、高齢化が進んでいる中、様々な疾患を抱えている高齢者が増加しており、

リハビリの必要性が増している状況です。

しかし、リハビリが必要な人の中には低栄養状態の人も多く存在しています。

低栄養となると、リハビリの帰結が悪くなるため、栄養管理が必要なのです。

フレイル(frailty)に関して

日本老年医学会より

「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」

と定義されています。

低栄養と関連が強く、適切な介入により健常な状態へ改善することが可能です。

栄養管理においては、エネルギーとタンパク質量の確保が重要となります。

エネルギーについて

エネルギー出納バランスというものがあります。

食事から摂取するエネルギー量と身体活動などで消費するエネルギー量のバランスです。

エネルギー出納バランスの結果が体重とBMI(Body mass index)です。

目標BMI

 65歳以上 21.5~24.9kg/m²

 49歳未満 18.5~24.9kg/m²

最も低い総死亡率

 22.5~27.4kg/m²

このBMIの範囲を目標に食事量を調整する必要があります。

推定エネルギー必要量

安静時のエネルギー消費量は、基礎代謝量を用いて求めます。

基礎代謝量を求める推定式を3つ紹介します。

W:体重kg、H:身長cm、A:年齢

➀Harris-Benedictの式…日本人以外を対象とした式ですが、臨床現場での使用頻度は多い

 男性:66.5+13.75×W+5.0×H-6.76×A

 女性:655.1+9.56×W+1.85×H-4.68×A

②基礎代謝基準値(日本人の食事摂取基2020年版)…日本人を対象に作成

 男性:65~74歳 21.6×W

    75歳以上 21.5×W

 女性:65~74歳 20.7×W

    75歳以上 20.7×W

③国立健康・栄養研究所の式(Ganpuleらの式)…日本人を対象に作成

 男性:(0.0481×W+0.0234×H-0.0138×A-0.4235)×1000/4.186

 女性:(0.0481×W+0.0234×H-0.0138×A-0.9708)×1000/4.186

入院人の場合は以下の式で考えることが多いです。

 推定エネルギー必要量(kcal)=基礎代謝量(kcal/日)×活動係数×ストレス係数

また、メッツ(metabolic equivalents:METs)を用いた式は以下の通りです。

 エネルギー消費量(kcal)=体重(kg)×メッツ×時間(h)

メッツとは、座位安静時代謝量の何倍に相当するかを示した身体活動の強度の指標です。

エネルギー必要量を推定する場合は、誤差が生じる可能性があります。

あくまでも目安と考え、モニタリングしながら調整する必要があります。

また、リハビリでの消費量も考慮して摂取エネルギー量をコントロールしましょう。

タンパク質について

生活習慣病の発生予防のためのタンパク質の目標量は以下となっています。

日本人の食事摂取基準2020年版より

 65歳以上:15~20%エネルギー

 50~64歳:14~20%エネルギー

 49歳未満:13~20%エネルギー

%エネルギーとは、摂取した総エネルギー量に占めるタンパク質のエネルギー割合です。

 タンパク質1g=4kcalで換算されます。

成人のタンパク質の推奨量:0.92(g/kg体重/日)

 体重が50kgの推奨量=0.92×50=46(g/日)

フレイルおよびサルコペニアの発症予防を目的とした場合

摂取エネルギー量の不足がないことを前提として

65歳以上:少なくとも1.0(g/kg体重/日)以上の摂取

慢性腎疾患を有する人:

 ステージ2(GFR60mL/min以上)まで:タンパク質制限なし

 ステージ3a(GFR45~59mL/min)の場合:0.8~1.0g/kgの制限

 ステージ3b(GFR15未満~44mL/min)の場合:0.6~0.8g/kgの制限

タンパク質を摂取する上での注意点

タンパク質は摂取すればするだけ筋肉や筋力の増強につながるわけではありません。

アミノ酸プールという概念があります。

栄養素は体が必要と判断されたときに利用されます。

十分に飽和されている場合には、それ以上蓄積されません。

他の目的に利用されることや尿中に排泄されることが起こります。

タンパク質が十分に摂取できている人は、

過剰に摂取しても筋肉や筋力増強は生じにくいことが言われています。

食事がしっかりと摂取できていない人は、

摂取したタンパク質がエネルギー源として利用されないようにすることが必要です。

十分なエネルギーを確保したうえで、

筋肉量の増加や筋力増強のためにタンパク質を摂取するようにしましょう。

栄養療法と運動療法を合わせて考えることが大切です。

必須アミノ酸について

必須アミノ酸とは、

人の体内での合成では必要量に満たず、

食事から摂取する必要があるアミノ酸のことです。

該当するのは9種あります。

  1. トリプトファン
  2. リジン
  3. メチオニン
  4. フェニルアラニン
  5. スレオニン
  6. バリン
  7. ロイシン
  8. イソロイシン
  9. ヒスチジン

アミノ酸スコアについて

アミノ酸バランスの評価で表わされるものです。

アミノ酸バランスが良い食品とは、

必須アミノ酸が体が必要とする割合で含まれている食品のことです。

理想的な割合の時に、アミノ酸スコアは100となります。

アミノ酸スコアが100の食品としては、以下の食品が挙げられます。

 肉(牛・豚・鶏)、魚、鶏卵、牛乳、大豆など

分岐鎖アミノ酸(branched chain amino acid:BCAA)

近年、注目を浴びているBCAAですが、

BCAAと呼ばれる必須アミノ酸は、以下の3種です。

  1. バリン
  2. ロイシン
  3. イソロイシン

筋肉の増強のためには、特にロイシンの摂取が有用とされています。

ロイシンが哺乳類ラパマイシン標的タンパク質と呼ばれる酵素を活性化して、

タンパク質合成を促す因子として働くためと言われています。

リハビリを行う際には、

BCAAを摂取することで回復が促進される可能性があるため、

積極的な摂取を検討しましょう。

哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mammalian target of rapamycin:mTOR)

今後、リハビリの国家試験に出題されたら面白いですね。

まとめ

近年、リハビリと栄養管理はより密接に考えられるようになってきました。

多職種連携も求められる現在で、

専門性も重要ですが、専門以外の知識も議論を深めるために必要と思われます。

エネルギーに関しては、

リハビリにより消費されたエネルギー量を考える必要があります。

タンパク質に関しては、

十分なエネルギーを確保したうえでの摂取が大切です。

その際にBCAAを積極的に摂取することが望ましいです。

摂取方法としては、ある食事に偏るのではなく、

3食まんべんなく食べることが筋肉合成には効率が良いことが報告されています。

日々の食事を見直して、

必要であるなら、栄養補助食品の導入も検討しましょう。

今回、紹介した論文には詳しい表など掲載されていますので、

ぜひ一読して見てください。

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