近年、リハビリテーション栄養と取り上げられて注目が集まっています。
血液データを読み取ることは全身状態を把握する上でとても重要です。
今回は、栄養の中でも特に視点が集まるアルブミンについて取り上げます。
また、トランスフェリンやトランスサイレチンについても一緒に考えていきます。
今回の引用・参考文献
リハスタッフのためのイチからわかる臨床検査値活用術
監修:美津島隆、山内克哉 著者:鈴木啓介、加茂智彦
メジカルビュー社、2018
Alb(アルブミン:albumin)
Albは基本的に栄養状態を反映しています。
基準値は以下に示します。
- 基準値:4.1~5.1g/dL
- 高値:脱水症
- 低値:ネフローゼ症候群、重度肝障害、炎症性疾患、悪液質、低栄養
- パニック値:6.0g/dL以上、2.0g/dL以下
- 半減期:21日
Alb値の異常としては以下のようなもので起こります。
➀産生低下(肝障害、炎症状態、低栄養)
肝機能の評価やCRP、TPの値の確認
食事量、提供されているカロリー量、消費カロリーなどの確認
②体外への漏出(尿など)
尿タンパクの有無の確認
③代謝の亢進(炎症状態、甲状腺機能亢進症)
WBCやCRP、甲状腺機能を確認
リハビリへの活かし方として、
重度栄養障害(Alb2.0未満)の場合、
機能維持を目的にROMや褥瘡予防のためのポジショニングに留めておきます。
中等度栄養障害の(Alb2.0~2.7)の場合、
機能維持を目的としたROMを中心に少しずつ運動を開始します。
機能改善が見込める場合は負荷量を徐々に増やしていきます。
軽度栄養障害(Alb2.8~3.8)の場合、
栄養状態の改善とともに運動負荷を徐々に増やしていきます。
Alb値が低値を示す可能性のある薬剤があります。
ペニシリン系抗生物質製剤(ペニシリンG)の大量投与
Tf(トランスフェリン:transferrin)
Tfもまた栄養状態を反映します。
基準値は以下に示します。
- 基準値:190~320mg/dL
- 高値:急性肝炎、鉄欠乏性貧血、真性多血症
- 低値:肝硬変、ネフローゼ症候群、膠原病・感染症、低栄養
- パニック値:100mg/dL以下
- 半減期:7日
Tfが影響を受けてしまうもの
鉄代謝(鉄欠乏で増加する)、炎症、感染症、肝疾患
リハビリへの活かし方として、
重度栄養障害:100mg/dL以下
機能維持を目的に実施します。
中等度栄養障害:150mg/dL以下
機能維持から状態を見ながら機能改善を目的に実施します。
軽度栄養障害:200mg/dL以下
状態を見ながら機能改善を目的に負荷量を調整していきます。
TTR(トランスサイレチン:transthyretin)
TTRもまた栄養状態を反映しています。
TTRはPA(プレアルブミン:pre albumin)とも呼ばれています。
基準値は以下に示します。
- 基準値:16~40mg/dL
- 高値:腎不全、甲状腺機能亢進症、急性肝炎回復期、高カロリー輸液
- 低値:低栄養、肝機能障害、炎症症状
- パニック値:5.0mg/dL以下
- 半減期:1.9日
TTRが影響を受けてしまうもの
急性炎症(火傷)、感染症、肝機能障害
TTRの栄養以外の利用としては、
肝障害の重症度や肝予備能、肝でのタンパク合成能の把握
リハビリへの活かし方として、
重度栄養障害:5.0mg/dL以下
機能維持を目的としたリハビリに留めます。
中等度栄養障害:5.1~10.1mg/dL
リハビリの負荷量を確認して実施します。
軽度栄養障害:10.1~15.1mg/dL
機能改善を目指しますが、栄養状態が悪化するようであれば負荷量を調整します。
栄養状態正常:15.1mg/dL以上
負荷量の高いリハを積極的に実施します。
RBP(レチノール結合タンパク:retinol-binding protein)
半減期は16時間と短く、短期の栄養状態の指標と優れています。
しかし、肝胆道系疾患で減少し、糸球体濾過能の影響で腎疾患では増加します。
まとめ
今回、栄養状態を測る指標であるAlb、Tf、TTR、RBPについて紹介しました。
それぞれをまとめてみますと、以下の表になります。
半減期 | 栄養障害なし | 軽度栄養障害 | 中等度栄養障害 | 重度栄養障害 | |
Alb(g/dL) | 21日 | 3.8以上 | 3.8~2.8 | 2.7~2.0 | 2.0未満 |
Tf(mg/dL) | 7日 | 200以上 | 200~151 | 150~101 | 100以下 |
TTR(mg/dL) | 1.9日 | 15.1以上 | 15.0~10.1 | 10.0~5.1 | 5.0以下 |
RBP | 16時間 | ||||
リハビリ内容 | 積極的な 機能改善 | 機能改善 | 機能維持 →機能改善 | 機能維持 |
しかし、どの程度まで負荷をかけてよいのかなどの検討が十分ではなく、
患者の状態をみながらリハビリの負荷量を変更していることが現状のようです。
さて、栄養指標はさまざまな要因が絡むと値も変化します。
Albであれば、炎症や肝機能、腎機能
Tfであれば、鉄代謝、炎症、感染症、肝機能、腎機能
TTRであれば、肝機能、急性炎症、感染症
以上のように、栄養状態を把握するためには、
栄養指標だけでなく、肝機能や腎機能などの全身状態を把握する必要があります。
患者の状態を整理して、正しく栄養状態をみれるようにしましょう。
肝機能や腎機能に関する検査値についてはまたの機会に紹介させていただきます。
今回、紹介させていただいた書籍は、症例の紹介もあるなど、
とても読みやすいものだと思いますので、
ぜひ一読いただけたらと思います。
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