近年、リハビリ職がNSTの一員として活動するなど、
リハビリテーションと栄養に強い関心が向けられています。
しかし、リハビリ職は養成校などで栄養について学ぶ機会は少ない状態です。
特に、臨床検査値に関しては生理学などで一応学ぶことはありますが、
苦手とする人が多く存在する印象を受けます。
今回は、CRPとTPについて学んでいきたいと思います。
今回の引用・参考文献
リハスタッフのためのイチからわかる臨床検査値活用術
監修:美津島隆、山内克哉 著者:鈴木啓介、加茂智彦
メジカルビュー社、2018
CRP(C反応性タンパク:C-reactive protein)
CRPは基本的に炎症反応を反映しています。
基準値は以下に示します。
- 0.14mg/dL以下:基準値
- 0.14~1mg/dL:軽度上昇 歯周炎、ウイルス感染など
- 1~10mg/dL:中等度上昇 心筋梗塞、血管炎、外傷、外科的手術など
- 10mg/dL以上:重度上昇 細菌性心内膜炎、細菌性髄膜炎、敗血症、白血病など
- パニック値:30.0mg/dL以上
CRP上昇時の観察事項として、以下のものが挙げられます。
- 発熱・感染の有無、息切れ、胸痛の有無、食事・水分摂取状況、排泄状況、疼痛など
CRPは炎症マーカーの代表的なものですが、
高値=感染、低値=非感染というわけではありません。
炎症がどの程度起きているか確認できるものであり、
炎症や組織の崩壊後3~6時間以内に増加し、2~3日目がピークとなります。
他の炎症マーカーも同時に見て、炎症の程度や時期を見極める必要があります。
リハビリの活かし方としては、
CRP3.0未満の場合
積極的な機能改善を目標として負荷量を強めていきます。
CRP3.0~5.0の場合
機能改善を目的としたリハビリを検討してもよいですが、
検査値が持続している場合には、変化に注意が必要です。
機能改善を目的としたリハビリでCRPが上昇するようであれば、
メニューの再検討が必要です。
CRP5.0~10.0の場合
状態を確認しながらリハビリのメニューを変更していきます。
CRPの半減期(19時間)の関係でまだ高い値を示している場合、
機能改善を目的としたリハビリの実施も可能となります。
CRP10.0以上の場合
侵襲の程度が強いと考えられるため、
機能維持を目標としたリハビリを中心に実施します。
積極的な筋トレは筋肉量の減少を助長させる可能性があります。
CRPが低値を示す可能性がある薬剤もあります。
免疫抑制薬
薬剤のチェックも頭に入れておきましょう。
TP(総タンパク:total protein)
TPは血液中のタンパク質の総量を表します。
基準値は以下に示します。
- 基準値:6.6~8.1g/dL
- 高値:多発性骨髄腫、慢性活動性肝炎、自己免疫疾患、悪性腫瘍など
- 低値:ネフローゼ症候群、重度肝障害、悪液質、低栄養
- パニック値:10.0g/dL以上、4.0g/dL以下
TPに異常がある場合は、血清アルブミンを測定して、
A/G比(albumin/globulin ratio)や血清タンパク分画の確認が必要です。
TPとA/G比の変化について、以下に示します。
- TP↑、A/G比↑:臨床的意義は少ない
- TP↑、A/G比→:脱水症の疑い
- TP↑、A/G比↓:IgG、IgA、IgM、Mタンパク血症の値を確認
- TP↓、A/G比↑:免疫グロブリンの減少
- TP↓、A/G比→:血液や検体の希釈
- TP↓、A/G比↓:血清アルブミンの低下、栄養状態、肝機能を確認
留意点として、以下のものが挙げられます。
- 仰臥位:座位や立位よりも0.5~1.0g/dL低くなる
- 60歳以上:0.5g/dL程度低くなる
リハビリへの活かし方としては、
高値の場合、
- 脱水症状が出ていないかの確認
- めまい、吐き気、ぼんやりする、手足のふるえがないか確認。
低値の場合、
- 食事量の確認:高タンパク、高ビタミン食の摂取の促し
- バイタルサイン、熱発の有無の確認:易感染状態
- リハビリの負荷量に注意:低栄養状態が疑われる場合
TPが高値を示す可能性がある薬剤があります。
抗菌薬(βラクタム系のペニシリン系、セフィム系)の大量投与
まとめ
今回、CRPとTPについて紹介しました。
CRPに関しては、白血球などの血液や凝固系の検査データも関与しています。
TPに関しては、アルブミンや肝機能、腎機能系の検査データも関与してきます。
さまざまな検査データがありますが、
まずは、それぞれがどのようなことを測っているのかわかることが大切であると思い、
個々に紹介させていただきます。
本当に低栄養な状態なのか、あるいは何か炎症反応があって低値を示しているのか、
どこかの機能が悪くて吸収率が悪いのかなど、
検査値と総合的に見ることができれば、
フィジカルアセスメントと併せて、リハビリにもよい影響が及ぶことだと思います。
なかなか覚えることは難しいかと思いますが、
より質の良いリハビリを提供できるように頑張っていきましょう。
WBCやAlb、BUNなどの検査データについては、何回か分けて紹介させていただきます。
今回、紹介させていただいた書籍は、症例の紹介もあるなど、
とても読みやすいものだと思いますので、
ぜひ一読いただけたらと思います。
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