google.com, pub-8557824064745223, DIRECT, f08c47fec0942fa0 嚥下障害でのPEGの適応を考える | STちゅうげんのブログ

嚥下障害でのPEGの適応を考える

摂食嚥下リハビリを行う上で、経口摂取が困難な場合、

経鼻胃管や胃瘻といった経腸栄養法や

中心静脈や末梢静脈を用いた経静脈栄養法が用いられます。

今回は経管栄養への移行について取り上げ、

特に経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy;PEG)の適応

について考えてみようと思います。

今回の引用・参考文献

➀経皮内視鏡的胃瘻造設術後の摂食機能改善症例予測に関する検討

 西村智子ら

 日本消化器内視鏡学会雑誌,vol.56(4), 2014, pp1520-1526

②高齢者の摂食・嚥下障害における経管栄養への移行時期についての検討

 曽野弘士ら

 日本静脈経腸栄養学会雑誌, vol.31(5), 2016, pp1130-1135

胃瘻について

メリット

  • 消化管の機能保持
  • 経鼻胃管に比べ咽頭違和感の減少
  • 誤嚥性肺疾患のリスク減少 → 誤嚥性肺疾患が起こらないわけではない
  • 嚥下訓練を進めやすい

デメリット

  • 手術が必要
  • 唾液誤嚥は防ぐことが難しい
  • 食道機能の低下 → 逆流性食道炎や食道咽頭逆流のリスクあり
  • 嚥下機能の廃用 → 経口摂取頻度の減少
  • 瘻孔ケアが必要
  • カテーテルの交換が必要

経鼻胃管について

メリット

  • 手術が不要
  • 手技が比較的容易
  • 消化管の機能保持

デメリット

  • 自己抜去のリスク → 身体拘束の必要性あり
  • 嚥下の大きな妨げとなる
  • 鼻咽腔に損傷や違和感が発生
  • 審美性の問題
  • カテーテルの内径が細く、注入物によっては詰まる可能性あり

栄養管理の原則

❝If the gut works, use it❞(腸管が機能するのであれば経腸栄養を)

絶食後48~72時間以内には腸管粘膜の萎縮が始まります。

そのため、経腸栄養の再開はできる限り早期が望ましいとされています。

経管栄養に関する問題点

➀延命治療と捉える傾向が強く、経管栄養への移行が先送りになることがあります。

 これは、対象者やその家族だけでなく、医療従事者も

 経管栄養を「最後の手段」として捉える傾向があります。

②安易な経管栄養の導入

 すぐに絶食にして経口摂取を止めることで、口腔内環境の浄化や免疫能の賦活といった

 経口摂取の有益性を損なわせることがあります。

経管栄養への移行の基準

具体的な期日はこれまで示されていないのが現状です。

各種ガイドラインをまとめてみると、以下のように提言されています。

➀消化管機能が機能している場合:経管栄養

  • 経鼻経管栄養:4~6週未満の短期間
  • 胃瘻:4~6週以上の長期間

②消化管機能が機能していない場合:経静脈栄養

  • 末梢静脈栄養法:2週間未満
  • 中心静脈栄養法:2週間以上

曽野らの論文より

高齢者における摂食嚥下障害では、

経口摂取熱量が総必要エネルギー量の60%となってから、

喫食率増加のための取り組みが経管栄養よりも優先される期間は、

14日であることが示されています。

15日以降は積極的に胃瘻の導入を検討し、

28日目までに経管栄養の併用により

総必要エネルギー量の充足率60%以上達成できれば、

その転帰に大きな差は生じないと述べられています。

これに加え、経管栄養導入後の長期予後や経口摂取能の再獲得を期待するためには、

予後推定栄養指数が30以上あるいは、

喫食率が総必要エネルギー量の30%未満まで低下する前に、

経管栄養へ移行することも重要とされています。

つまり、PEGの時期を逸することなく、早期より経管栄養を併用しながら

喫食率の向上を図る方針へと転換する必要性があると示唆されています。

補足

  • 喫食率増加のための取り組み:全身状態の改善や食形態の工夫、リハビリなど
  • 総エネルギー必要量:Harris Benedictの式
  • 予後推定栄養指数:血清アルブミン値(g/dL)×10+総リンパ球数(/mm³)×0.005

PEGに関する疑問点

回復期リハビリをしている自分の経験として、

急性期の間にPEGを行って転院してくる人の数が少ない印象です。

勤務している所はPEGを行えないため、他病院へPEGを依頼する形になります。

PEGで転院している間に廃用となっていることがあり、

回復期の在院日数が長くなることを経験することから次のような疑問を持ちます。

  • 急性期にPEGを判断して、回復期に繋げられないのか

自分が考えた結果としては、以下の2点を考えます。

➀PEGのイメージの問題

 延命治療のイメージが根強く、急性期の段階では考えることができない。

②診療報酬の問題

 平成26年度診療報酬改定において、胃瘻に関する診療報酬が見直されています。

 胃瘻造設術の診療報酬の引き下げ

 胃瘻造設時嚥下機能評価加算の追加:術前にVE/VFの実施と十分なIC

 年間50件以上で減算要件の発生:術前に全例VE/VFの実施と経口摂取回復率35%以上

特に診療報酬の問題は、VE/VFが実施できる施設に限られ、

経口摂取回復率35%以上というのも難しいため、

PEGの件数を減らそうという動きになっているのではないかと推測されます。

まとめ

今回は嚥下障害でのPEGの適応に関して考えてみました。

摂食嚥下障害を抱える人にとって経管栄養は栄養を摂取するための

重要な栄養ルートのひとつです。

摂食嚥下リハビリにおいて早期に評価・介入が望ましいことですが、

長期的になる症例が多い印象があります。

順調に経口摂取が進んでいけばよいですが、

さまざまな要因が重なり、うまく進まないケースもあります。

経管栄養への移行時期について、確定した報告はありませんが、

PEG導入を検討する時期を見極めることは重要であると思われます。

また、PEGに対する正しい知識が広がって、対象者の選択肢に幅がくれたらと思います。

今回、紹介させていただいた論文は、

嚥下障害と経管栄養について、いろいろと参考となりますので、

ぜひ一読いただけたらと思います。

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