google.com, pub-8557824064745223, DIRECT, f08c47fec0942fa0 舌骨上筋群に対する訓練手技の紹介 | STちゅうげんのブログ

舌骨上筋群に対する訓練手技の紹介

嚥下筋に対するレジスタンストレーニング(resistance training:RT)は、

多くの訓練法が提唱されてきています。

特に、舌骨上筋群に関しては注目を浴びていると思われます。

そこで、今回は舌骨上筋群のRTと新しい訓練手技が紹介されたものがありましたので

まとめていきたいと思います。

今回の引用・参考文献

舌骨上筋群に対するレジスタンストレーニング

ー舌骨運動への新たな訓練手技「Nishioマニューバー」の紹介ー

福岡達之,西尾正輝

ディサースリア臨床研究 Vol.8 No.1 pp130-133,2018

舌骨上筋群に対する運動訓練

Head raising exercise(Shaker exercise)

提唱したのは、Shaker氏で、舌骨上筋群に対する筋力強化の方法とされています。

臥位で頭頸部を屈曲させることにより舌骨上筋群に負荷を加える方法です。

頭部の重さを利用した自重トレーニングと考えることもできます。

  • 頭頸部屈曲の保持(1分間):関節運動を伴わず筋長が変化しない等尺性収縮
  • 反復運動(30回):筋長が変化する等張性収縮
  • 自重の状態で頭部をゆっくり床に戻す運動:伸張性収縮

以上のように、筋力増強の原理を満たした訓練法となります。

効果(一定の頻度と期間を満たした場合)としては、

  • 舌骨喉頭挙上量の増加
  • 食道入口部開大径の増大
  • 咽頭残留・誤嚥の減少

メリットとしては、

  • 実施方法が理解しやすい
  • 特別な機器や場所を必要としない
  • 自主訓練が可能

デメリットとしては、

  • 負荷量が高く、原法通りに実施することが困難なことがある
  • 他の筋群(頸部周囲筋や腹筋群)にも負荷が加わる
  • 先行して胸鎖乳突筋に筋疲労が生じ、適切な負荷が加わらない可能性がある

頭部挙上訓練の変法としては、

  • 嚥下おでこ体操
  • 聖隷式頭頸部挙上訓練
  • 徒手的頸部筋力増強訓練
  • chin push-pull maneuver など

呼気筋トレーニング(expiratory muscle strength training:EMST)

呼吸訓練用具を用いて呼気に一定の負荷(最大呼気筋力75%)を加える方法です。

効果としては、

  • 発声
  • 咳嗽能力の向上
  • 嚥下機能

嚥下機能へ影響を及ぼす機序としては、

  • EMST時の舌骨上筋群筋活動の増大
  • 嚥下時に産生される声門下圧の協調性の改善

開口訓練

最大開口位の保持を負荷とする方法です。

舌骨上筋群は開口時にも収縮します。

実施方法は、

  • 最大開口位を10秒間保持、休息を10秒間
  • 1セット10回、1日2セット、4週間継続

効果としては、

  • 開口力の増大
  • 食道入口部開大径の増加
  • 咽頭残留の減少

開口力は舌骨上筋群の筋力の指標となります。

開口力は加齢により低下し、男性においてはサルコペニアとの関連が指摘されています。

Nishioマニューバー

舌骨上筋群に対するRTでは、

  • 訓練時に舌骨上筋群以外の筋が収縮する
  • 舌骨以外の器官が代償運動を行う場合がある

このようなことを避け、

対象筋に対してより直接的なアプローチを検討する必要があることから

考案された方法です。

舌骨の前方移動に対し抵抗負荷を加える舌骨上筋群のRTとされています。

実施方法としては、

  • 閉口位で、舌骨体に示指と中指を当てる
  • 後方へ向かって押して負荷を加える
  • 約5秒間、その抵抗に抗して、舌根を強く後退させ続ける
  • 教示「できるだけ強く、舌を後ろに引っ込め続けてください」
  • 座位でも臥位でも可能

注意点としては、

  • 下顎骨を固定した閉口位の方が安定することに留意
  • 舌の後退運動は、ペンライトと鏡を使用して視覚的に正しい運動をフィードバック
  • 舌骨体を二点で後方に向かって押して負荷を与える
  • 痛みや強い違和感がある場合には十分に留意して実施
  • 臥位の場合は、頸部の伸展に注意
  • 負荷量は、舌骨の前方移動が触知できる程度から開始する

期待できる効果としては、

  • 嚥下時の舌骨の前方移動と食道入口部開大径の増大
  • 咽頭残留と誤嚥の減少

今後、検証が必要なこととして、

  • 適応となる症例
  • 最適な負荷量や訓練頻度

まとめ

舌骨上筋群に対するRTでは、さまざまな訓練方法が提唱されています。

Head Raising Exerciseのように、

特別な機器や場所を必要としないものでも負荷量に問題があったり、

呼吸筋トレーニングでは、呼吸訓練用具が必要であったり、

他の器官が代償運動を行っていたりと、

普段の臨床場面で、注意深く考えないといけないものが多くあります。

今回、Nishioマニューバーといった新たな訓練手技を取り上げましたが、

従来の舌骨上筋群に対するRTと比較して、

  • 頭頸部屈曲の際に生じるような胸鎖乳突筋の筋活動や筋疲労を起こすことがない
  • 舌骨運動に対して直接抵抗を加える

という点では、新規性を有する訓練手技と言われています。

一長一短ある様々な訓練手技の選択肢の一つにしていきたいですね。

どこかで講習があれば参加してみたいものです。

今回、取り上げさせていただいた文献ですが、

舌骨運動と舌骨上筋群の作用についても触れられていますので、

ぜひ一読いただけたらと思います。

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